ちょっと役立つ印刷・デザイン用語のマメ知識(1)~紙にはなぜA判とB判がある?~
このコーナーでは、普段何気なく使っている印刷やデザインに関する専門用語をピックアップして解説します。
知らなくても特に支障はありませんが、知っているとちょっと面白くて役立つ、そんなマメ知識をお届けしたいと思います。
第1回目は紙のサイズについてのお話。
「学生時代のノートはB5だったけど、ビジネスで使う書類はほとんどがA4…」。
こんなふうに、私たちは日頃いろんなサイズの用紙を使い分けていますが、なぜA判とB判という2つの規格が存在するのでしょうか?
「どちらかに統一するほうが便利じゃないの?」と、少し疑問に思いましたので、それぞれの生い立ちを調べてみました。
ドイツ生まれの世界規格、A判
A判は、1922年にドイツで考案された規格で、841mm×1189mmの「A0」が基本。
これが今でも世界中で使われる国際規格となっています。
この規格は、約1平方メートルの面積を持つ紙(A0サイズ)を基準にして、その紙を半分に折りながらサイズを決定していくという考え方に基づいています。
A0を基準としA1、A2、A3、A4…と、サイズが半分になるたびに番号が1つ増えます。
例えば、A4サイズはA3サイズの半分。
このため各サイズのヨコ・タテの長さの比率は常に「1:√2(約1.4142)」を保っています。
この比率は、折りたたんでも同じ形状を維持できるという利点があります。
日本の伝統が生きる独自規格、B判
一方、B判のルーツは日本伝統の和紙「美濃紙」と言われています。
江戸時代には障子紙として使われることが多くなり、その規格が273mm×395mmの「美濃判」として広がりました。
明治になって外国から洋紙が輸入されるようになり、
イギリスの「クラウン判(1091mm×788mm)」が美濃判を約8倍にした大きさで、
これが現在のB1サイズ(1030mm×728mm)に近い大きさだったため、広く出回るようになりました。
また従来から日本では、書籍のサイズは四六判(130mm×188mm)が主流。
これはA6判(105mm×148mm)を約1.5倍にした大きさとなり、現在のB6判(128 mm×182mm)に近いサイズです。
このように古来から「B判系」の紙に親しんできた日本人。
日常生活での使いやすさを考慮するとA判だけでは対応できなかったため、1951年に日本工業規格(JIS)によって現在のB判の規格が整備されました。
白銀比のマジック
余談ですが、1:√2の比率は「白銀比」と呼ばれ、人間にとって美しいと感じられる比率になっているそう。
紙のサイズ以外でも建築やアート、マンガの世界などに幅広く使われています。
例えば、東京スカイツリーは「第二展望台までの高さ:全体の高さ= 1:√2」。
奈良・法隆寺の金堂は「二階の屋根の横幅:一階の屋根の横幅= 1:√2」という白銀比。
ほかドラえもん、アンパンマン、ハローキティなど、キャラクターの横幅と身長が白銀比になっているという説もあり、日常生活の至る所に白銀比は潜んでいるのです。
サイズの使い分けを楽しむ
A判は一般的に世界的な標準サイズとして使われ、書類や印刷物、コピー用紙などに広く用いられています。
一方、B判は特に日本国内での雑誌や本、ポスター、カードなどに使われることが多い大きさ。
冒頭に「どちらかに統一するほうが便利じゃないの?」なんて言いましたけど、やっぱり多彩なサイズを選ぶことができて、制作ツールに応じて使い分けることが楽しいのだと思います。
表現力、訴求力を高めるために、紙のサイズ感にもこだわって、オリジナルツールをつくりたいですね。